実録?百物語
7、キョロちゃん
text by 網屋徹
6年ほど前のこと。UFOキャッチャーでキョロちゃんの人形を獲った。プラスチック製で足の裏に電極が2つあり、その両方を指で触ると「クェッ、クェッ」と鳴く。UFOキャッチャーの醍醐味は、景品を獲るまでの過程にある。景品を手にした瞬間、興味が失せてしまうことも少なくない。そのキョロちゃん人形も、部屋の飾りとして長いこと本棚の上でほこりをかぶることになった。
そのキョロちゃんが1年ぶりに鳴いた。深夜2時ころ、本棚の上でひとりでに「クェッ、クェッ」と鳴き声をあげた。ふと見上げたが、誰が触るでもなく、以前からと同じ格好で鎮座している。手に取って見てみたが、これといって異常もない。奇妙なこともあるもんだと、薄ら寒くなった。
その2、3日後にまた鳴いた。同じような時間に、本棚の上で。さすがに怖くなったが、鳴く瞬間を見てやろうと机の上において2、3日観察した。しかし、ひとりでに鳴いたのはその2回だけだった。
その後、どこに紛れたか、キョロちゃんは行方しれずになっている。