実録?百物語
11、お稲荷さん
text by オオヤギみき(TOKYO GOONIEZ)
ウチのお母さんの実家には、仏壇の隣に「お稲荷さん」がある。ちょうど、仏壇と同じくらいの大きさで、ふたつ一緒に並んでいるのだ。いわゆる「稲荷信仰」ってヤツなのか? よくわかんないケド、オレんちには昔っから「キツネ」にまつわる不思議な話が多いのも確かだ。その辺の話はまたあとで詳しく書くケド、オレ自身にもこんな話がある。高校を卒業して、東京に出て来て、まず最初に京王線の「西調布」ってトコに住んだ。家から駅まで歩いて5〜6分だったんだケド、その途中にお稲荷さんの社があった。小さな社で、道路に面した所にポツンとあって、なんだかヘンなカンジだった。この西調布の家は、管理人がチョーイヤなヤツだったのと、京王線の通勤ラッシュがイヤで半年
で出てしまった。
次に引っ越したのが中野区南台。ココから学校まではバスで通ってたんだケド、同じく、バス停に行くまでの道に、小さなお稲荷さんがあった。このあたりから、ヒョっとして、オレの近くにお稲荷さんがついて回るのでは? なんてちょっと思えてきて、悪いコトがあったら、コンビニでいなり寿司を買って、お供えに行ったりもした。
神奈川県の日吉に引っ越したときには、「きっと近くにお稲荷さんがあるハズ」と思い、原チャリで町中を探しまくったが、特に見当たらない。「なあ〜んだ、ヤッパ気のせいだったか」と思い、安心してたんだケド、その時のバイト先のナナメ向かいにお稲荷さんの社があったのを、そのスグあとに発見した。
もうコレは確実だ、オレのことを見張ってやがる。
オレのデザイン事務所、グーンダックスタジオが学芸大学に移動したときは、なにするよりもまず先に、原チャリで町中をお稲荷さんを探しまくった。確かにあったはあったが、街ハズレに小さな社があっただけ。事務所からはかなり離れている。「ウ〜ン、やっぱオレの思い過ごしだったのかなあ〜」なんて思いながら、事務所のマドを開けたら、スグ隣に赤い旗が見える。事務所の隣の家が稲荷信仰で、庭にお稲荷さんの社があったのだ。
渋谷にオープンさせた店の向かい側にもお稲荷さんがあったし、三軒茶屋の彼女の家に向かう路地にも小さな社がある。
徳川家康が、商売繁盛の神様を、江戸には異常なホド設置したらしいから、東京には他の都市よりもお稲荷さんが多いのは確かだから、偶然て言われりゃそれまでだけど、ただそれだけって気が、なんだかしないのだ。
最初はなんだか気味がワルかったケド、今じゃなんだか守ってくれてるような気がして、なんだかチョット心強い。
事務所が中目黒に移って約1ヶ月目。この文章を打ってる仕事部屋のマドからも、赤い旗が見えたりしてるのだ。