実録?百物語
50、お化け電話ボックス その1
text by 網屋徹
怖い話好きだった兄貴から聞いた話。友人と3人で、鹿児島市の南部から薩摩半島の南端まで抜ける山間の有料道路を走っていたとき
のこと。その有料道路は、いわゆる走り屋ご用達の道で、兄貴にとっては庭のようなものだったのだが、ある
コーナーでクルマがスピンし始め、制御不能になってしまったそうな。rnrnクルマの体勢を元に戻そうとカ
ウンターを当てると逆方向にスピンし、またカウンターを当てるとまた逆方向にスピンし、という感じで、片側
二輪とも脱輪してようやく止まった。rnrn助けを呼ぼうにも、真夜中のことで通りかかるクルマもない。し
ばらく待った末にようやく通り掛かったクルマを止め、最寄りの電話ボックスまで乗せてもらうことにした。3人
のうち1人が現場に残り、兄貴と、霊感の持ち主であるA子さんが電話をかけに行くことになったんだと。rnr
n町の方に向かってしばらくクルマを走らせると、電話ボックスの明かりが見えてきた。「あそこでいいかい?」
と尋ねるドライバーに兄貴が応えようとすると、A 子さんが無言で兄貴の服の袖を引っ張ったそうな。A子さんが
霊的なものを感じている時の合図だ。何かある、と思った兄貴は、ここらは人気がなくて寂しいからと、もう一
つ先の電話まで行ってもらうように頼んだ。rnrnクルマを降りて、何があったのかをA子さんに尋ねると、
彼女はこう答えた。rnrn「あそこの電話ボックスに幽霊がいて、電話かけてた…」rnrnJAFの
クルマに乗って再びそこを通りかかったときには、幽霊の姿は消えていたそうな。rnrnまだ携帯電話も、ポ
ケットベルさえも一般的ではなかったころの話。