実録?百物語

5、真夜中の親子

text by 網屋徹

兄貴が中学生くらいの時に体験した話。だから、今から25年くらい前のこと。鹿児島県の実家の自室で、夜中に本を読んでいると、庭の方から親子連れの声が聞こえたんだと。

「ねぇお母さん、疲れてもう歩けないよ」
「もう少しの辛抱だから、がんばって歩こうね」

まだ年若い母親と、小さな女の子の会話だったらしい。しかし、本当なら聞こえるべき会話ではなかったと思う。実家は通りからはだいぶ奥まったところにあるし、当時、庭の向こうは崖になっており、その下にはスクラップ置き場しかなかったからだ。

ただ、関係があるのかどうかはわからないが、その日は終戦記念日だったそうな。

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