実録?百物語
49、ランナー その2
text by 網屋徹
母校の大学に伝わっていた話。rnrn多くの私立大学がするように、その大学でもスポーツ成績優秀者を特待生として入学させていたが、あ
る年の特待生の中に、将来を嘱望された長距離ランナーがいたそうな。rnrn私が入学した当時にはすでに廃
止されていたが、当時は学内のマラソン大会が行われていたらしい。その年の優勝候補筆頭は、当然その彼。し
かし、彼は実は心臓に持病を持っており、いずれにしても選手生命は長くなかったそうな。医者からは止められ
ていたが、周囲の期待の大きさを考えると誰にも相談できず、病気をおしてマラソン大会に出場した。rnrn
マラソン大会当日。予想通り彼がトップで戻ってきた。暖かい拍手で彼を迎え入れる観衆。しかし、彼はゴール
すると同時に心臓マヒを起こし、帰らぬ人となってしまった。rnrn後日、ゴールの瞬間の写真を現像してみ
ると、彼を祝福するために拍手をしていたはずの観衆の手は、右掌と左掌がぴったりと合わさっていて、ちょう
ど合掌をしているように見えたそうだ。