実録?百物語
30、占い
text by 網屋徹
義姉から聞いた話。敬虔なプロテスタントである彼女は、教えに従って占いは見ないという。テレビで占いをやっていればすぐにチャンネルを変えるし、雑誌なんかによくある占いのページは読まずに素通りするそうな。しかし、生涯に一度だけ、雑誌の占いを興味半分で読んだことがあるらしい。
占いの内容は、あまりいいものではなかったんだと。まあこんなのあてになるわけないし…と顔を上げた途端、目の前が急に暗くなった。
昼間だったにも関わらず、黄昏時のような暗さ。教会にあるステンドグラスを通して、光が部屋の中に入ってきているような感じだったらしい。何これっ?と思った瞬間、両手を大きく広げた黒い人影のようなものが、自分の目の前を右から左へ横切ったそうな。「それ」が目の前を通りすぎる刹那に、こう言ったらしい。
「信じてない、信じてないって言って、結局は信じてるんじゃないかー」
彼女が占いを見たのは、後にも先にもその一回だけだそうな。