実録?百物語
64、お化け屋敷 その4
text by 網屋徹
兄貴から聞いた、兄貴の女友達の話。彼女が霊を見るきっかけとなった出来事。rnrn彼女の家の近くに「お化け屋敷」と呼ばれている空
き家があった。借家になっており、わりと立地条件のいいところだが、入居した借り手がすぐに出ていってしま
うというお決まりのパターンらしい。困った大家は、なにがあるのか確かめてほしいと、近所にある大学の柔道
部だか空手部だかの猛者たちに、一晩泊まり込んでもらったそうだが、その屈強の強者たちも「あんな怖いとこ
ろ、二度とごめんッス」と言ったというエピソードもある。rnrnなにしろ、彼女は1人でそこに向かったん
だと。いろんなことでムシャクシャしていた時期で、特にお化け屋敷探検という気持ちがあったわけではないら
しい。ただ“なんとなく”だったそうな。 家の玄関まで来ると、玄関の脇に、白髪の老婆が家の
壁にもたれ掛かるようにして座っていたんだと。老婆は彼女を見上げると、「この家に入るつもりかい? 勇気あ
るねえ、あんた」とでも言いたげにニヤァっと笑ったんだと。rnrn実は、家の中まで入るかどうか悩んでい
たそうだが、多少つっぱっていた彼女は、老婆のその顔を見て「ばかやろう、入ってやらあ」という気になった
らしい。がらりと入り口を開けて入ったそうな。rnrn家の中は、気味が悪いことは悪いが、特にあやしげな
雰囲気もなかったらしい。お化け屋敷なんて言っても、案外なにもないもんかもね。rnrn家の外に出ると、
先ほどの老婆はいなくなっていたそうな。rnrnrnその後、彼女は、どうしてこんなに...、というほど金
回りが悪くなってひどく苦労したらしい。ようやく一息つけるほど金回りが良くなってきたころ、気がつくと霊
が見えるようになっていたんだと。rnrn聞くところによると、そのお化け屋敷、住んでいた家族が借金地獄
に苦しんで、一家心中をしたといういわくのある家だったとか。