実録?百物語
26、古墳の公園
text by 網屋徹
大学に入学した年だったので、1991年のこと。私が通っていた大阪のある大学の裏手に、小さな公園があった。その公園は、緑に囲まれてパッと目にはわからないが、小さな古墳を中心に設計されていた。
5月の連休だったと思う。深夜の1時すぎに友人と4人でその公園のわきを通りかかった。その公園の存在は知っていたが、まだ中に入ったことがなかったので、「古墳見に行かない?」とみんなを誘った。小雨の中、家路を急いでいたのだが、好奇心からふっと行きたくなったのだ。
4人のうちの唯一の女の子であるSNさんが、「私はいやや。古墳ってお墓やろ? そんなん怖いやん」と言った。女の子がそんなことを言うと、男は逆に盛り上がってしまうからおかしなもんである。嫌がるSNさんを引っ張るようにして、公園の中へ入った。
見ると、古墳の中心とおぼしき方に向かって、石畳の道が敷いてある。言い出しっぺの私を先頭に、一列になってその道をたどっていくことにした。数m先で、道は直角に曲がっている。そのあたりから、背の高い木々が植えられており、あたかも木でできたトンネルに入っていくような格好になった。木のトンネルに入ってわずか2mほどで、石畳は終わっている。落ち葉が積もった土の上に、足を踏みだした。
と、妙なことに気づいた。周りの木々から、次々に葉っぱが落ちてくるのだ。冬の寒い時期ならともかく、新緑の萌える5月だというのに。本能的にヤバイと思った。いや、本気でびびった。
「やっぱ怖いからここまでにしようか」と言って、無理やり引き返した。男連中からはさんざんばかにされたけど、それ以上進む気はなかった。正直言って、ヤバイと思う場所には近づかないのが吉である。いや、マジな話。