実録?百物語

61、お化け屋敷 その1

text by 網屋徹

今から15年くらい前、大学1
年生のときの話。兄貴に連れられて、お化け屋敷を見に行ったことがある。rnrn夏休みに帰省して、自動車
教習所に通っていたころだ。仮免を取り、兄貴の車でよく路上で練習していた。そんなある日の夕方、兄貴が
「お化け屋敷を見に行くか?」と言った。一家惨殺があった家らしい。rnrnその頃はとんでもなくビビリ
だったので、ほんとは嫌だったが、その時は兄貴が運転していたので否応なく連れていかれてしまった。rnr
n問題の家は、とある谷の西側の斜面にある。谷と言っても別に山の中ではなく、団地や私立の高校・大学、テ
レビ局もあるような街中だ。谷底の川と平行して走る道路は、細いながらそれなりの交通量がある。その道路を
挟んだ東側の斜面に、兄貴は車を止めた。西側の斜面までの距離は、ゆうに200mを越えている。「遠いけど、
こっちからの方が家の全体が見えるんだ」。西側の斜面の向こうに、沈んでいく太陽が見えた。rnrn「ほ
ら。あそこ、あの家」と兄貴は指さした。しかし、指を差されたところで、200m先にあるものがそう簡単にわか
るわけはない。「え、どこ?」と聞きかけて、やめた。その場所が瞬時にわかってしまったからだ。rnrnま
だかろうじて太陽の光を受けている東側の斜面と違い、西側の斜面はすでに影になっている。その影の中で、あ
る一軒家だけがぼぅっとした光を放っていたのだ。まるでオーラのように。rnrn後日、そのオーラの話を兄
貴にした。兄貴には見えていなかったらしいが、「やっぱ、なんかあるんだあの家」と言って、次のような体験
談を語ってくれた。

▲ページトップ