実録?百物語
29、離脱
text by 網屋徹
元同僚のOくんから聞いた話。自室で寝転がっていた。起き上がろうと思って体を動かしたところ、やけに体が軽い。おやっと思い、上体をひねって後ろを振り向くと、そこにあるはずのない自分の手が見えた。その瞬間に、自分の上半身が幽体離脱をしていることに気づいたそうな。
あ、これが幽体離脱か、せっかくの機会だから思う存分楽しむことにしようか、と思った瞬間、もと通り自分の体の中に戻っていた。
「幽体離脱を楽しもうと思ったのにはわけがあるんですよ。幽体離脱が起こったときに、焦って自分の体に戻ろうとすると、逆に戻れなくなるらしいということを聞いていたからなんです…」