実録?百物語

47、提灯行列

text by 網屋徹

以前、仕事でつきあいのあったAMさん
から聞いた、第二十話「虫の知らせ」で紹介した、AMさんの友人であるH田さんに関係した話。AMさんが、K 県
のT久井郡にあるH田さんの家に泊まりに行くと、金縛りにあったり、妙な経験をしたり、ということが必ず起き
るらしい。これは、そんな不思議な体験のひとつ。rnrn真夏の深夜2時ごろ、AMさんとK林さんで、H田さ
んの家へと車を走らせていた。T久井郡の山道はコーナーが多くて、走り好きのドライバーにはとても楽しめる道
なのだとか。K林さんは、カーレースをやっていた腕の持ち主で、きついコーナーも驚くべき速さで周って行く。
AMさんは横でそれを楽しんでいが、あるコーナーを抜けると、道路の右側に提灯が並んで光っているのが見え
た。rnrn提灯行列は、道路の際にある鳥居から山の上の方にずらりと並んで続いていて、思わずその美しさ
に見とれてしまったらしい。しかし、よく考えると、夜中の2時に提灯を明々と照らすのはおかしいのではない
か。K林さんは、お盆だし、田舎だからな、などと言って一人で納得している。AMさんも「そんなもんかね」と
か言って、深くは考えなかった。rnrnH 田さんの家に着くと、H田さんは開口一番にこう言った。「さっ
き、家の周りが何かざわざわしたから、雨戸を開けて外を見てみると、白い服を着た大勢の人がぞろぞろと山の
方へ歩いていったぜ。きっとお盆だからな」。なんだか、判ったような判らないような…。AMさんはふと
気になって、さっきの提灯行列の話を H田さんに話して聞かせたが、「この近くには神社もお寺もないよ」と言
われてしまった。AMさんは、確かに見たんだけどな…と、腑に落ちない顔をしていると、じゃあ確かめに
いくか、ということになり、再び車に乗り込んだ。rnrn先程のコーナーに着いた。しかし、提灯はおろか、
鳥居も何にもない。違うコーナーだったかなと思って、しばらく行き来したが、やはり何も見あたらない。で
も、確かに2人とも見たんだよ、と言うと、H田さんは何かを考えるように黙り込んでしまい二度と口を開かな
かった。rnrnそのことについて、その後話をすることはなかったが、その時に見た提灯行列は、今もAMさ
んの記憶にはっきり残っているそうだ。

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