実録?百物語

38、お札

text by 網屋徹

大学時代に体育会系の友人HTくんが住んで
いた、とあるアパートでの話。rnrnそのアパートはかなり古く、トイレは共同、風呂がないかわりに家賃が
格安、という物件だった。rnrn入学したばかりのある日、体育会系の集まりがあり、そこでこんな話を聞か
された。曰く、「M町にある古いアパートには、お札が貼ってある部屋がある。それは、その部屋で自殺した学生
の霊を鎮めるためのものである」と。rnrn「先輩、それって○○荘のこと違いますか?」rn「おう、よく
知ってんな」rn「自分、そこに住んでるんですけど」rn「お前の部屋にあるかもしれへんぞ、お札」rn
rn部屋に帰ってさっそく調べてみた。が、それらしきものは見当たらない。やれ一安心と思っていると、同じ
アパートに住む体育会系の友人が訪ねてきたそうな。rnrn出迎えたHTくん、「おれんとこには、お札な
かったよ…」と言いながらふと上を見上げると、壁の間に隠すように、こっそりとお札が貼ってあったらし
い。rnrnいろいろなところから話を聞くに、その部屋ではいろいろと不思議なこともあったそうだが、HT
くん自身は特に何も感じなかったようだ。まあ、それにしても、卒業までその部屋に住み続けた彼は、剛毅とい
うより他はない。

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