実録?百物語

4、老婆

text by 網屋徹

元同僚のSYさんから聞いた、彼女の男友達の話。

彼が学生時代に住んでいたアパートの裏手に墓地があり、彼の部屋はいわゆる霊の通り道になっていたそうな。ある日、昼過ぎに起きた。洗面所で顔を洗って部屋のほうを振り返ると、この世のものではない老婆が2人、彼のベッドの上で世間話に興じていたんだと。ありゃーと思って眺めていると、1人の老婆が彼に気づいて、こう言ったたらしい。

「おや、あの子見えてるみたいよ。殺してやろうか?」

後ろも見ずに逃げ出し、しばらくして部屋に戻ったときには、老婆の姿は消えていたんだと。

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