水晶のドクロ
2、ヘッジス・スカル その2
text by 網屋徹
加工の難しさだけでなく、精緻な“計算”もヘッジス・スカルの中には隠されている。それは「レンズ効果」(あるいはプリズム効果?)である。例えば文字を書いた紙の上にヘッジス・スカルを置くと、頭頂部から(一説には眼窩から)その文字が拡大されて見えると言う。古代文明を現代文明と比較して遅れていたと考えているとしばしば痛い目に遭うのだが、マヤ人たちがそこまで計算してヘッジス・スカルを作ったとすれば、これはまったくオドロキであると言うしかない。ヘッジス・スカルは、アメリカのコンピュータ関連メーカーであるヒューレット・パッカード社によって、1970年に科学的な調査が施されている。水晶はコンピュータ関連機器の主要部品として使われることが多いため、同社はまさに“水晶の専門家”と言えるだろう。
さて、その調査結果では、
・ヘッジス・スカルは、同一の水晶から作られている。しかも、下顎は完成したドクロから切り
出されている
・ヘッジス・スカルは、水晶の結晶軸に反する形で(=加工に適さない形で)切り出されている
・顕微鏡で確認しても、表面にキズらしいキズが認められない(=金属によって加工されている)
などの事柄が確認された。この調査結果は、当時のヒューレット・パッカード社の社内報にも掲載されたらしい。
この調査によって、ヘッジス・スカルの精巧さ、加工に際して高度な技術が使われたことなどが証明されたわけだが、逆に「ヘッジス・スカルは近代に作られたものだ」というオーパーツ説否定派にとってもその論拠となり得る事柄が明らかになったことも、また事実だろう。ヘッジス・スカルを「アトランティスの遺産である」と主張ていたミッチェルとアンナのヘッジス親子は、イカサマ師であるとのレッテルを貼られることになった。
現在、ヘッジス・スカルは、カナダ在住のアンナの手元に保管されている。イカサマ騒動に倦んだアンナが人目を避けるようにして暮らしていることもあり、ヘッジス・スカルがメディアの前にその姿を現すことはめったにないと言う。